リサイクル技術導入でCO₂削減へ。カーボンニュートラルに向けた技術者の挑戦とキャリア実現
2025.07.29

「アイシンは、本気でカーボンニュートラルに取り組んでいる。」アルミニウム材料の専門家として、新たな技術開発を推進するCN技術開発部の北村 智之。アルミニウム製品のCO₂削減に向けた鍵を握る北村が語る、技術開発の現場と挑戦の意義・おもしろさを聞きました。
アイシンのカーボンニュートラルに向けた挑戦。アルミニウム製品の環境負荷を限りなくゼロに

アイシンの製品には広くアルミニウム合金が使用されており、そのアルミニウム製品のCO₂削減に取り組む北村。
「現在の仕事は、アイシンやアイシングループでつくられるアルミニウム製品の原料のCO₂を削減するという、企業全体で掲げるミッションに基づいた技術開発です。製造工程はもちろん、国内外から調達する原料の見直しやリサイクル原料を活用したCO₂の削減技術の開発を進めています。」
アルミニウムはアルミ缶で知られるように再生利用が可能な素材として知られています。これはコストだけでなく環境負荷低減に大きな効果があるからです。
「使用済みのアルミニウム製品を再溶解して製品をつくることで、CO₂排出量を約95%削減できます。これは、鉱石であるボーキサイトを製錬してアルミ地金を製造する工程で発生するCO₂を丸ごと減らせるからです。そのため、市場で使用されたアルミニウム製品を回収してリサイクルすることが、CO₂削減には不可欠なのです。」
2021年に設立されたCN技術開発部。北村が所属するCN材料技術開発室には、金属材料、樹脂材料の2グループがあり、その中で7人のメンバーがチームを組みアルミニウム素材に関する業務に取り組んでいます。
「メンバーの半数が他部署からの異動者、残りの半数がキャリア採用者で、私自身もキャリア採用で入社しました。私は技術面での取りまとめや新しいアイデアの創出を担当。入社してから、私自身で新たにプロジェクトを立ち上げ進行しています。」
アイシンは、2050年のカーボンニュートラルを目標に掲げており、目前のCO₂削減目標を達成するため日々開発に取り組んでいます。
「スクラップ材を今以上に配合できるようにするための技術開発を行っていますが、現状では不純物の影響でこれ以上の配合が困難な状況です。この状況からアイシンが掲げる目標値を製品まで落とし込みつつ、さらに配合率を高めていかなければいけません。そのため、現在ではスクラップ中の不純物低減が可能なアップグレード技術の開発に取り組んでいます。」
形になり始めた挑戦。CO₂削減に向けやるべきことを
「立ち上げたプロジェクトが、3年目の今年になって徐々に形になってきました。アイデアを出し、自分で企画を立て、手を動かしながら開発を進められる環境があります。」
前職では研究開発部署に所属しながらもマネージャー的な業務が中心でしたが、現在は一貫して開発に携われる環境に魅力を感じています。
「やりたいことが実現できているというところが、アイシンに来てよかったともっとも感じる点です。専門性を高められる環境があることは、私にとって大きな価値があります。」
自身の開発とは別に、他部署からの技術相談にも対応し、製品開発における助言も行うことも。
「製品開発部門とは月に何度も意見交換をしています。私は前職でダイカストをはじめとした鋳造材や展伸系の板材など幅広いアルミニウム製品の開発経験があります。
そのため、製品が異なっても、ほとんどの技術相談に対応できることもあり、自身の知識・経験が社内で役立てているのはうれしいことです。時には特許申請の際にアドバイスで関わっていたため、名前を載せていただくこともありましたね。」
今後はさらなる技術開発の加速をめざし、チーム全体のレベルアップを図っていく考えです。
「先ほどの話でも触れたように、アイシンは2050年カーボンニュートラルを目標に掲げていますが、それを実現するためにはまず達成すべき目前の目標値があります。その達成に向けて、今年はどこまで技術を確立しなければいけないのか。まだ足りていない部分もあるので、どんどん新しいアイデアを出していく必要があります。同時に、私1人のナレッジでは限界があることを認識しているので、将来的には同じレベルの知識を持つ仲間を増やしていきたいと考えています。1馬力より2馬力、3馬力の方がいいですから。」
人材育成の観点では、学生時代から自身がアルミニウムに関わってきた経験や知識を活かし、週1回のペースで教育プログラムを実施。マンツーマンに近い形で、同じチームの若手メンバーに向けて教育の時間を取っています。
裁量多く開発を行える環境。その中でめざすキャリアとは
北村は、アイシンでの今後の目標について、ビジョンを語ります。
「プロフェッショナルとして専門性を突き詰めていきたいです。社内だけでなく、社外からも認められる存在になることをめざしています。具体的には、アルミニウムの分野で『アイシンには北村がいる』と言われるような存在になりたいと考えています。」
専門性を追求する姿勢は、社内外での活動にも表れています。学会や研究部会に積極的に参加し、アルミニウムに関する知見を深め、ネットワークを広げています。
「学会でも、よく声をかけられます。こうした反応は、自分の専門性が認知されている証だと感じています。最終的には、私がアイシンにいることで、会社の技術レベルの高さや信頼性を示すことができ、それがお客さまとの信頼や関係性強化につながるような存在になれれば、と考えています。」