福岡市博多エリアに、AI開発拠点を開設された経緯を教えてください。

M.K : 2015年3月、北九州の学術研究都市に、アイシンの九州開発センターが設立され、電子先行開発部が発足し、自動運転に関連する要素技術開発を行っていました。それらの要素技術開発には、画像認識による物体検知が必要で、画像認識にAIを活用していこうということで、AI開発に特化したエンジニア組織が独立。2019年(1月)より、DS部 九州開発センターが始まったのです。

なるほど、アイシンでは、台場・刈谷本社にも、AI開発拠点がありますが、博多に開設された目的について教えてください。

M.K : 2点あります。一つは、九州エリアの優秀なエンジニアや研究者の獲得です。九州にはコンピューターサイエンスについて学べる大学があり、いつかは地元で働きたいというエンジニアが多い土地柄なんです。
首都圏で数年間経験を積まれて、福岡へ転職されてきた方が、博多ラボにも入社してくれています。

早速、博多ラボの開設効果があったということですね。もう一つの理由は?

M.K : ここ数年、福岡市は、ソフトウェアエンジニアに、注目されるエリアになっています。IT企業が開発拠点を進出させ、AIやソフトウェア関連のベンチャーも起業されている。私たち博多ラボでは、大学などの研究機関や協働開発できるパートナー企業を探す目的でも、福岡市が適しているんです。

福岡市にソフトウェアエンジニアが集まってきているのは知りませんでした。

M.K : はい、そうなんです。IT企業は多いのですが、実は私たちアイシンのような自動車関連メーカー×AI開発を手掛ける企業は福岡市には少ない。なので、自動運転やMaasに求められるAI技術に興味のある方が、アイシンに集まっていただければと考えています。

博多ラボで取り組んでいるAI技術について教えてください。

M.K : 大きく2つのテーマに取り組んでいます。自動運転などをより早く社会実装する為の取組みを行っています。
一つは、CASEの自動運転(Autonomous)領域の要素技術として自動車の周辺環境をカメラにて捉え認識するAI技術を開発しています。
もう一つは、CASEのシェアリング(Shared & Services)領域の要素技術として、おもてなし機能と呼んでいる車室内外の人や車両の状態推定を行うAI技術を開発しています。MaaS領域のサービスにつながる技術です。

博多ラボでは、CASE・MaaSの社会実装につながるAI技術に特化されているんですね。

M.K : そうですね。過去の画像認識・画像解析の技術開発の蓄積があり、今取り組んでいるプロジェクトへと繋がっているんです。

この博多ラボは、博多駅からも近くてアクセスが便利ですよね。

M.K : 博多ラボの立地には、いくつかのこだわりがありました。例えば、ソフトウェアエンジニアが転職先を探す際に、福岡市の中心部を好むことや、AI開発に必要なデータセンターが近いことなどです。

データセンターが近いと、何がメリットなんでしょうか?

M.K : AI・人工知能の技術開発には、高性能なGPUサーバーが使用され、データ通信にも専用の回線が必要です。GPUサーバーを構えるデータセンターの近くに開発拠点を置くことで、高速データ通信が可能になり、エンジニアがストレスを感じずに開発に取り組めています。

エンジニアにとっての働きやすさを求めた立地ということですね。

M.K : そうですね。他にもオフィス環境にも、働きやすさを重視した狙いがあります。台場のオフィスはご存知ですか?

以前に、台場オフィスも取材しています。

M.K : 台場オフィスも同じなのですが、アクティビティ・ベースド・ワーキング(Activity Based Working)をコンセプトとして、オフィスを設計しています。アクティビティ・ベースド・ワーキングとは、目的別席のことで、働き方を選択でき、コミュニケーションを助長させるオフィスのことです。

いわゆるフリーアドレスなオフィスということでしょうか?

M.K : フリーアドレスもその一部です。例えば、毎日違う席に座ることで、気分の変化や新しいつながりができたり、離席率の高いエリアのスペースを有効活用したり、働ける場を自由に選択してモチベーションを向上させたりなどが、期待できるんです。

なるほど、いくつか、オフィス内を紹介していただけますか。

M.K : 開発室には、中央に広く設けられたフリーアドレスエリアがあります。ディスプレイを2台設けた席や、立ちながら仕事ができるスタンディング席も、自分の好みでその日のデスクが選択できます。次は、簡単な打ち合わせができるソファやBOX席がある、リフレッシュエリア。周りを遮断して、一人で集中できるソロスペースも設けています。

今、お話を伺っているカフェスペースも、シックでおしゃれですね。

M.K : ここは、オープンカフェエリアと呼んでおり、セキュリティカードなしで入室できます。大きなディスプレイもあり、20~30人程度の会議やミーティングもできますので、ゆくゆくは社外の方をお呼びして、技術交流会やハッカソンなどを開催していきたいと話しているんですよ。

博多ラボをハブとして、福岡市のエンジニアが交流できるといいですね。

M.K : この立地の良さを生かして、オープンで開かれた技術交流がしたいですね。

今後、この博多ラボをどう発展させていきたいと考えていますか? 

M.K : 開発拠点に、この福岡市を選んだ理由として、アジアと日本の懸け橋となる地域であることが、あげられます。首都圏エリア、本社のある東海エリアとも、新幹線や飛行機でアクセスが容易です。韓国・台湾・中国にも近く、東南アジアの国々の方にも、親しみやすい都市だと聞いています。
この立地を生かして、アジアと日本の連携窓口となりたいです。

今後も、エンジニアは増やしていく予定でしょうか。

M.K : そうですね。博多ラボの新オフィスは、65名まで許容できます。現在は20名程度なので、数年以内には、65名まで仲間を増やしたいですね。ここ博多ラボから、CASEの社会実装につながる要素技術開発を拡充させていきたいです。