M.Hさんは台場開発センターの立ち上げ時から、現在に続くオフィス改善プロジェクトを主導してきたとか。

M.H : 正確にはAI関連の開発部署が入るフロアの立ち上げからですね。先行して稼働が始まった電子部品を開発する部署などには関わっていません。

なぜ、このAIの研究開発を行うオフィスのみを担当されたのですか?

M.H : 我々はもともと自動車関連のハードウェアをつくる会社ですから、ソフト系のエンジニアの皆さんとはやはり仕事への取り組み方が違います。彼らの働き方に最適化されたまったく新しいオフィスをつくるためには、これまでの延長線上にあるやり方ではダメだという判断ですね。

なるほど、それでソフト系での経験を買われてM.Hさんが抜擢されたということですか。

M.H : ええ、たぶんそういうことだと思います。新部署の立ち上げを機に、いかにソフトウェアエンジニアの方々にとって魅力的な会社になるかという取り組みの一環ですね。

では、新オフィスの設計においてどのような点を工夫したのか教えてください。

M.H : このオフィスは「Innovative Office」というコンセプトのもと、ふたつの軸で設計されています。一つ目は、個人の創造性を刺激するオフィスを目指すという軸。そこで我々は「音」に着目し、フロア内のエリアごとに音のグラデーションをつけることで、業務の集中度に応じたスペースを選択できるようにしました。

一人静かに集中したい時と、皆でワイワイ話し合いたい時で場所を変えられるということですか。

M.H : はい。検証などの作業に没頭したいときに、自分の席のまわりが騒々しかったら集中できませんからね。

K.K : どのようなエリアがあるのかいくつか実例を挙げると、作業に没頭できるボックス席、複数人で会話しながら仕事ができるファミレス席、大きなホワイトボードを挟む二人席、あとは立った状態でも仕事ができる昇降式デスクを設置した席まであります。

S.H : フリーアドレスですから、業務内容やその時の気分によって働く場所を変えられるんですよ。

ノートPCを持ち歩き、好きな場所で仕事をするスタイルですね。

K.K : もちろん業務によってはマシンパワーが必要になりますので、そういう時は特区と呼ばれるエリアに置かれているハイスペックなマシンを利用できます。そのほか、クラウドやデータセンターのリソースも利用して開発を行うことが出来ますので、環境はかなり充実していますね。コーディングなどで複数の画面を使いたいときもフロアに設置されている大きなマルチモニタが便利です。

さまざまな作業エリア

もう一つの工夫点は?

M.H : 働く人たちの動線を意識し、コミュニケーションの促進を図ることです。その一例として、わざと通路にT字を多く設け、ジグザグ歩かないと目的の場所に着けないオフィスレイアウトにしています。このような工夫をあちこちに凝らすことで、偶発的なコミュニケーションが生まれやすい環境にしようと考えました。

S.H : 会議室と執務スペースの間にカフェテリアがあるのも、きっと狙いなんですね。会議の後にちょっと話したいなと思ったときに、ちょうどいい場所にあるんですよ。

M.H : そう、狙い通り(笑)。

偶発的なコミュニケーションですか。確かに、一般的なオフィスだと話す相手が固定されがちですよね。

M.H : 特にリモートワークが当たり前になってからは、誰かと毎日顔を合わせるということがなくなりました。出社した社員同士が交流をもつことで、新しいアイデアが生まれるきっかけになるかもしれないですから、その機会を失うことは会社にとっての損失ともいえますよね。

会議室と執務スペースの間のカフェテリア

リモートワークはどのような形で使われていますか?

S.H : 私はその時の業務内容と生産性を考慮して、週2〜3で出社しています。作業に集中したい時は在宅で、チームで話し合って進める仕事がある時は出社してという感じです。

K.K : 僕も同じくらいのペースで出社しています。アイディア出しやブレストはオンラインでもできないことはないんですけど、他のメンバーの発言が終わるのを待って順番に話さないといけないので、やっぱり直接顔を合わせてやったほうが議論がはかどると思います。

社員間のコミュニケーションのためにどのようなツールを活用していますか?

M.H : メインはTeamsですが、プロジェクトごとにさまざまなツールを使い分けています。ハードウェアを含め必要なものは申請すれば会社が用意してくれますので、そのあたりの柔軟性、自由度は高いと思います。

K.K : ちなみに私が所属するチームでは「oVice(オヴィス)」というツールを導入しています。これはいわゆるバーチャルオフィスで、常に誰がどこにいて何をしているかがバーチャル空間上で見えるんですね。「あの人は今会議中だから終わったら声かけよう」みたいな使い方ができるので、とても重宝しています。

K.KさんとS.Hさんはリモート期間中のご入社ですが、コミュニケーションの面は大丈夫でした?

K.K : 私のチームでは毎週月曜日に皆で雑談する時間を設けていて、各自の趣味など仕事とは関係ない話をして親交を深めています。そこでメンバーの皆さんとの関係性を築くことができたので、業務中に質問があっても遠慮することなく声をかけることができました。

S.H : アイシンっていわゆる製造業っていう感じではないんですよね。入社前にこの採用サイトも見ましたが、当初は「これは建前で、本当はみんなスーツや作業着で働いているのではないか?」って疑っていました(笑)。でも、入ってびっくり。このサイトの雰囲気そのままです。スーツで働く人は一人もいません。皆さん本当に柔らかくて自由で・・・。だから私も割とすぐになじむことができました。

お台場というロケーションはいかがです?

S.H : そうですね、隣の駅に東京ビッグサイトがあるので、大規模な展示会をササッと見に行けたりするのはかなり便利だと思います。競合の動きや業界のトレンドなど日頃の情報収集がかなり重要になってくる業務ですからね。

M.H : 最新の技術はやはり東京に集まりますし、感度高くアンテナを張り巡らせて愛知県の本社に情報を送り届けることも台場開発センターの役割の一つなんです。

最後に、今後について皆さんが考えていることを聞かせてください。

K.K : 私は現在、MaaSなどの分野で活用される対話AIの開発に取り組んでいます。これからも多くの技術的ハードルを超えていかなければなりませんが、チームの皆でクリアしながら社会課題の解決に貢献していきたいですね。

S.H : アイシンでのソフト開発は、国内外に広く展開される夢のある仕事だと思います。私も早く一人前になって、ものづくりの現場で役に立つシステムをつくっていきたいです。

お話をうかがっていると、大手であるにもかかわらず、新しいものをどんどん取り入れていくチャレンジングな姿勢に驚きます。

M.H : 我々が手がける開発は、全社でもとりわけ技術革新が早い分野ですからね。ただ、大手の安定感と、ベンチャー並みのフットワークの軽さが共存するここの風土は確かに特殊かもしれません。今後もソフトウェア開発に適した職場環境の整備を通じて、革新的な技術を世に送り出すためのバックアップを続けていきたいと思います。